不登校息子+親介護+単身赴任夫=思秋期なあたくし。

怒涛のようにやってきた不登校と介護と夫の単身赴任の荒波を、更年期のあたくしがサーフィンする日々の記録です。

なれそうな気がする、ではなくて。

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千松さんがナイフでイノシシの皮を丁寧に剥いでいくと

体内の熱が外気に触れ、ホカホカと湯気が立ち上る。

ジョリジョリ、ジョリジョリジョリジョリ・・・。

静かな作業小屋に響く解体の音は、イノシシらしさを放散している。

 

またある日の作業小屋では、

シカが柔らかに首を垂れ、

一気に逆剥きの後、首を落とす。

 

静かで穏やかな作業。

しかし此処に至るまでの狩猟の時間は生と生との格闘である。

千松さんは銃を使わない、わな猟師。

いわゆるトラバサミも使わない。

直径12センチ以下の、くくりわなを動物の痕跡のある個所に設置し、その日を待つ。

掛かった獲物には手近な木の棒を手に取り、真っ向から対決。

気絶させたところで大動脈をナイフで一刺し。絶命させる。

ダクダクとあふれ出る血液。

いわゆる血抜きが完了された獲物は、良い肉へと生まれ変わるのだ。

 

千松さんの猟は家族のための猟であり、

家族で食すための肉を自らの手で整え

余すところなく調理する。

イノシシの骨は煮込まれ、ラーメンのスープになって家族の笑顔を引き出していた。

 

・・・息子が観たいと言っていた映画。

たまには、と思い一緒に鑑賞した。

わたくしにとって、うん十年ぶりの渋谷。

上映館にストレートに到着できず、ホテル街を彷徨い汗だくで探し当てた。

円山町は今や裏渋と呼ばれるオシャレな場所なのだとか?

街も変わる。

人も変わる。

世の中の仕事も移り変わっていく。

鑑賞後、「オレ、猟師の仕事は出来る気がする」と興奮気味に言う息子に

心の中で、そうだね!と同感しながら

「もう、仮定はいい。そうと決めたら過程は独りで突き進み、『なった』と報告してくれればいいから」と、つまらないツッコミを入れてしまった。

わたくしも、そんなつまらない事しか言えない大人になってしまった・・・。

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ずぶ濡れでは夢見が悪くていかん

「逃げ癖は、正さなければならない」。

「だから高校退学は200パーセントあり得ない」。

 

夫は元不登校息子に、そう言い渡した。

 

父ちゃんに対するプレゼンを失敗した息子は夏休み明けに寮に戻る道すがら

行方をくらまし、迷走し、捕獲され、自宅に連れ戻された。

以来、いまだに夏休みを継続中である。

 

自宅近隣の全日制高校への転入は、ルートが無かった。

通信制高校への転入は、本人が魅力を感じていないのと、夫が許可しない。

わたくしとて芸能人でもなく、高校生実業家でもなくプロアスリートでもない息子が全日制高校を辞めて通信制高校で学ぶ道を選ぶ意味が見いだせないでいる。

しかし、このまま夏休みを継続したとて

息子が在籍する高校へ戻るとも思えない。

 

在籍高校の何がイヤなの?

週末、帰宅していた夫と3人で囲む食卓で息子に聞いてみた。

 

学校指定の上履きと運動靴が足に合わず、靴の中で擦れて四六時中痛い

だの

門限が厳しすぎて学校と寮以外の場所に行けない

だの

このままの進度では理科の教育課程が修了しないまま卒業してしまいそう

だの

食事が満たされない、もう少し器に盛ろうかと思うけど、

他の子のことを考えるとそれはできかねる、

だのとポツリぽつりとつぶやくように話し出す息子の言葉に

わたくしはうなずき、夫は反論する。

唯一、夫が間髪入れず咳き込みながら同意したのは

 

飯はさ、いっそ母ちゃんの飯の方が100倍うまい。

 

ブッ!がほがほっ・・・そりゃよほどのことだな💦気の毒に。

 

そう、真顔で言っている夫にツッコミを入れる隙は無かった💦

・・・夏野菜のトマトシチュー。

・・・ゴーヤチャンプルー

・・・明日葉のおひたし。

庭で採れた野菜とご近所で頂いた野菜たちとのマリアージュ

昨日は何を作ったっけっか?

・・・空心菜のニンニク炒め。

・・・ジャガイモと長ネギのクリームグラタン。

父ちゃんは、かれこれ20年、母ちゃんの飯だ。

イヤなら自分で鍋を振るまでだ。

・・・確かに。

昼飯に夫の作ったニラ玉なぞ、逸品であった。

しかし、これでは会話の乗っ取りだっ!

二の句が継げなくなった息子とわたくしを食卓に残して

夫はソファにゴロリと横になった・・・。

 

今日も午前中から通信制高校の電話でのリサーチ、

ZOOMでの説明会参加、

午後は直接学校説明会へと出向き都会を歩いた。

途中雨に降られ濡れた状態で乗車した電車で見た夢見が悪く

「うわーっ!」っと、声をあげて座席から立ち上がってしまった!!

 

 ・・・雨上がりのハイキングコースを息子と歩くわたくし。

 道はぬかるんでおり、落石も処々にみられる。目的地はまだ先だがこの天気。

 中間地点の池に到達したことで今日は諦めて戻ろうと行動を始めたが、

 息子はアッという間に池のあちら側に走って行ってしまった・・・。

 と、突然ぬかるんだ淵が息子を呑み込む。

 土砂が大量に流れ込み、濁流と化した池が流れを作り息子を押し流していく。

 こりゃ、一人じゃ助けられないと思ったわたくしは国土交通省に電話して

 土砂崩れ地点を告げる!地図を広げ、池につながる河川の消防に電話しまくる!

 たすけて!たすけて!わたくしでは息子を助けられない!

 滝口に飲まれていく息子の叫びを聞いた場面で夢を終えた・・・。

 

夫よ!わたくしの見た夢と同様の夢を見るがいい!

転送してやるっ!!!

そう念じてみたが残念。呪いが足らず、

やがて規則正しい夫の寝息が部屋中に響き始めた。

 

今朝、4時。

単身赴任先に戻る夫に、どうしてもこの夢の話をしてやろうとしたのだが

聞きたくもない話は振るな、と制止された。

寝床から起きてきた息子がスッっと足を伸ばし、わたくしの足の甲に自分の生暖かい足裏を乗せてきた。

 

鎹ではなく、楔だな息子。

 

kanimega.hatenablog.jp

 

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母には言えない。今はまだ。いや、もう言えないかも!

f:id:kanimega:20200825065330j:plain可愛らしい犬と好青年、

二人三脚の生活動画視聴が今の母のを支えている。

…というよりは、彼らの生活を覗き見する事が母の生き甲斐だ。

顔を合わせれば脈絡も無しに今日の動画の素晴らしかったこと、彼がどんな生い立ちなのか、犬との出会いが彼の今をどんなに豊かにしているのか、才能に溢れた優しい彼の動画登録者が今日は何人増えたか、もう少しで10万人に達するのよ、アンタも協力しなさいよ、友達にも勧めてね、だの、主語も無しに苦労人の彼の不遇時代を涙ながらに語り出す!!

…もう何遍聞かされたであろう今朝の動画の彼の体調不良が心配な話に、もう勘弁!

…もうリアルな寝食を忘れて彼と犬にのめり込むほどに日々の生活が侵食!



件の動画が防波堤となり母の本音はわたくしにまで届かないが、そこにぶつかった血飛沫のような悲鳴が見える。

「あんたの父親なんだから何とかして!」


…ゴメン。今はこれ以上は出来ない。

わたくしはもう10年そう言い続けて母を突き離し父の介護を任せてきた。

これ以上は力を貸せない理由をこちら側の防波堤として積み上げた。

同時に防波堤はわたくしの吐露も堰き止めて母に「あのね、実はね」と打ち明ける事を許さなくなった。

今回も言えない。

まさか息子が高校もまた不登校状態になり、退学を検討しているなんて!

タロが逃げてしまい、息子とわたくしと夫は

相当なダメージを受けている、なんて!


今朝再びタロの命に一縷の希をかけて裏山を歩いた。

すると前方から優しい面立ちのご婦人が。

互いに「おはようございます」と。

すれ違い様にわたくし、堰を切ったように「タロを見かけませんでしたか?」と尋ねてしまった!

タロは黄色いセキセイインコで、こちら側の山に向かい飛び去ってしまったのだ、と。

ご婦人しっかりと頷きながら受けとめてくださり、タロの捕獲に協力すると仰ってくれた。

振り返りつつ去っていくご婦人に

「お願いします」と頭を下げる頃には涙が汗と共にマスクを濡らし、鳴咽が止まらなくなっていた。

朝から怪しげなわたくしの長い影。

朝から素直になってしまった脆弱なわたくしの姿がタロが飛び去った方角に伸びていた。



正常性バイアスは発動しない。斜めに向き合い半分疑う。

高く高く舞い上がったタロウの行方を呆然と見つめるしかなかった。

人は、なぜ飛べないのだろう?

 

セキセイインコ。三代目(ホントは♀だけど)タロウは

羽ばたきの音だけを耳に残してわたくしたち親子の元を去ってしまった。

雑木の向こうは、ひろい広い空間が扇状に広がり空へつながっている。

あれほど仲良く暮らしてきたはずなのに

呼びかけに応じもせず黙々と小さな羽ばたきを繰り返して

そちらの方角へ消えたタロウ。

 

 

息子が走る。間に合うまい・・・。

 

数日前、帰省を終えた息子が帰還の途中に行方不明になった。

それを知らせた夫は仕事先から夜通し車を走らせて

息子の潜伏先に向かった。

当初わたくしは、息子の行動を信じており、危機を感じていなかった。

しかし、夫は息子の最悪の事態を予感し、居ても立っても居られなかったのだ。

「警察に連絡したのか?」

「この距離だ、何かあったら間に合わないかもしれない」と、

一晩中アクセルを踏み続けて息子の元へ近づいていったのだ。

800キロ。

羽ばたいて羽ばたいて自由を求め、姿をくらまそうとしていた息子は

夫の執念で捕獲され、連れ戻された。

 

人は、飛べない。

自由を得たセキセイインコは天井無しの空をどこまで飛べるだろう。

タロウに対しての正常性バイアスは発動せず、

やがてイカロスの翼のように黄色い羽根が動かなくなるまで太陽に近づいていったであろう。。。そしてそして、そのあとは。。。。と悪いイメージしか浮かんでこない。

「タロウもみつけてよっ」と、ヒステリックに夫に電話している自分の滑稽さを俯瞰で見て笑っている自分が見える。飛べないくせにっ!!

 

ダメと知りながら間に合わないと分かりながら

タロウを思い、それでも探している・・・。

 

ごめんねタロウ。

 

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ヒステリー球

f:id:kanimega:20200811153807j:plain喉が締め付けられるように感じる。

喉が重苦しく、何か詰まった感じがする。

 

大抵その症状が出てくるのは深夜で

その症状には、またか、と諦めながら。

それでも眠れない夜、はてなブログの皆さんを訪問して楽しんできた。

 

もともと肉が呑み込めなくて焼肉が嫌い。

BBQでも焼きに徹し、肉には手を出さないで生きてきた。

芋系の摂食も注意が必要で

焼き芋は目を白黒させながら水分を片手に食すことにしている。

・・・独居で年老いた自分が芋を喉に詰まらせてのたうち回り

絶命・・・そんな光景を思い描くことがあるほどである。

 

そんな体質を「メンドクサイ身体だな」と半ば呆れながら気遣い

肉を小さく切り分けてくれる。

そんな友達がいつの時代にも居てくれるわたくしは、幸せ者に違いない。

 

医療にもかかったことがある。エコーをしてみても何もない喉。

ヒステリー球と言うらしい。

確定診断と治療のために精神科への通院を勧められた。

ならば、いいや。と、その先の治療には進まないで放置してきたのだ。

 

一昨日の午後、クロネコヤマトが自宅前に停まった。

まさか・・・と思う間もなくインターフォンが鳴る。

「宅急便です」

 ではなく、

「荷物のお届けです。6個口と一つです」

と、お兄さん。

恐れていた事態の幕開け。1000キロ離れた息子の学内寮から返送されてきた生活用品たちだった。

衣類、書籍類、息子が寮で使うために自作したデスクトップPC。

たちまち玄関は大量の荷。

煮えくり返るわたくしのハラワタ!

入学祝に頂戴した様々な記憶とともにすべてが返送されてきた様相を前にし、

喉がぎゅうぎゅうと締め付けられた。

昼間にこんなですか!?さすがのわたくしも慌てた。

動悸もする!・・・とりあえずパルスオキシメーターで脈を計測してみた。

100超え!芋も不要。今なら逝けるかもしれん・・・。

 

次いでクロネコヤマトが、あろうことか、おかわりを配達してきたではないかい!

「2つです」

と、運び込まれたのはプチプチに包まれた自転車2台・・・。

普段使い用とクロスバイク

完璧に帰還モードではないかバカ息子っ( ;∀;)

失意を感じるのはどうしてなんだろうか?

息子の人生をわたくしの思いどおりに運転できるとでも思っていたのだろか?

どうにもこうにも ・・・。

 

ただ一つ、決意したことがある。

今日からは、

ここ数年、息子に注いできたパワーを自分に向けてみよう、と。

手始めにママ友以前の友達に会いに行こう、と。

 

カラスウリの花言葉「良き便り」に特化して想う!

今年もまた、カラスウリの花が咲く季節になった。

 

闇の中、レースを広げてわたくしを待っていてくれた白い花。

どうぞどうぞ、その花言葉にあるように

わたくしに吉報をもたらしてください・・・そう願っていながら気づいている。

わたくしにとっての吉報は、万人にとっての吉報とは限らないこと。

わたくしにとっての吉報は、誰かの我慢の妥協の諦めの果てにもたらされる場合もあるということを。

 

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 ↑

母よ!ごめんね💦

 

ならば、わたくしが我慢、妥協、諦めさえすれば他者に吉報をもたらすこともあるのだろうか・・・?

どうして一つの結論が互いの要件を満たさない?どうして引っ張り合う?

折り合いをつけるにはどうしたらいい?

 

母としてわたくしは、息子とどう向き合えばいいのだろう?

・・・の堂々巡りにまたもや突入してしまった。乗り越えても乗り越えても寄せてくる波のごとく・・・。

 

ここは地獄なのか?

ならば、その白いレースにわたくしを絡みとって花弁を閉じておくれよカラスウリ

そして闇に紛れて行方不明になってしまいたい。

秋に赤い実の中に黒い結び目の種となって現れるから。休眠させておくれよ!

 

・・・なんてメソメソしていたら携帯がメールを受信した。職場のMちゃんからだ。

【一生懸命悩んだらええやん】ってか。なんや、こいつ!若いくせに解ってやがる!

Mちゃん、なかなかの非観血的治療家で、最近では触れずとも1000キロ離れた場所で腐っている息子の気持ちを代弁できてしまう・・・。こわっ!

 

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不登校児だったMちゃんをしっかりと大人に育てあげた、Mちゃんのおふくろの影を感じ、ありがたかった。

 

人生はリレーなのかもしれない。

わたくしの今も、いつか誰かに寄り添うことができるかもしれないから、

また地獄めぐりの旅を始めよう・・・。ヤだけど・・・。

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 息子にとっての良き便りが、わたくしの地獄度を増すことにならないといいなぁ。

 

一杯の冷やしジャコ天うどん

「千円お預かりします・・・」

レジ前で奮闘するバイト君。響くエラー音。

・・・わたくしは急いでいないよ、ゆっくりおやり。あうっ!またエラーがっ!

うつむくバイト君は高校生だろうか。

いや、県は高校生バイトを奨励していないから、大学生かもしれない。

先ほど別れてきた息子よりも華奢な肩をしている。

・・・オバちゃん、お水飲んでこよかねっ!と、

気を利かせたつもりでその場を離れた。

バイト君の後ろに店主とおぼしきミドルがそっと寄り添った。

水を持ってレジへ戻るとバイト君が不器用にそれでも丁寧にトレーにお釣りを並べているところだった。

「できたらお呼びします」

真っ直ぐにこちらを見て呼びかけられた。

きっと、良いバイト君として育つことであろうね!

こういう子が伸びしろがある、というのだろう。

・・・ありがとう、よろしくねっ💦

 

こうして親の手の届かないところで子供は格段に成長していく。

ウチの息子も、このままこの地で成長を続けて欲しいのだが・・・。

 

「冷やしじゃこ天お待たせしました」

やがてカウンターから声が掛かり、わたくしは半日ぶりの食事を前にした。

18時。

昨夜、仕事上がりにバスに乗り、息子の通う学校の三者面談のために県を跨いで来た。

コロナ感染拡大地域からの大移動であることの後ろめたさ、

面談の内容のエグみが食欲を奪い、空腹を感じなかったのだ。

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すだちの香りが爽やか。

ジャコ天の旨味が濃厚。

澄んだ汁が栄養満点であることを伝えてくれる。

うどんのコシが格別だ。一杯でしっかり満たされる。

やがて汁に浮かんだ青ネギの一切れさえ残さずに食べ終えた。

 

この数か月で5回目の地。

旅行ならばそんな回数を同じ場所へ通わないだろう。

とすれば、既にこの地とわたくしは、息子が結んだ縁でつながっている。

親としてはもとより、個人としてもまだ切りたくない、切られたくない縁。

しかし息子は縁の先につながる人間関係が煩わしく、独りになりたいと主張するのだ。

結んだ縁。既にわたくしが預かり知らないところで息子は人と環境に恵まれ

時間を進めているのにも関わらず、すべてを手放そうとしている。

礼は尽くさなければならない。

手放した場所には戻れない。

しかし、あとは自分で決めること・・・そう伝えて息子と別れてきた。

 

店の壁紙メニューには、冷やしは季節ものだと書いてある。

もう二度と食べられないかもしれない。