あと何秒我慢したらいいの?
と、息子からLINEが送られてきた。
いい人ヅラしてウソついて。もうヤダ!
…と。
生来頑固でなかなか本音を吐けない性質の息子(15歳)がストレートに気持ちを言語化して寄越したことに、チョット嬉しく思ったり、いや、思わなかったり。
気持ちは晴れのち雹か、カタブイ(片降り)の雨か。
身体は吃逆を飲み込んだ時のように喉がギュッと固くなった。
いい人ヅラも、君のホントのツラだ。
何しろ君は優しくて、いい子なのだから。
決してウソじゃないよ。
よく相談してくれたね。
そう返信し、携帯の電源を切った。
中学2年、3年を、まるっと2年間不登校をキメこんだ息子が毎日登校する奇跡は、
ここで途絶えてしまうのかもしれない。
普通ならば、どう対応するのだろ?
あれ?ウチの息子は普通なんだっけ???
1000キロの距離。2ヶ月会っていない。
会って話がしたい。新宿バスタから夜行バスに乗れば明日には会える。
在宅勤務で赴任先から帰還していた夫に状況を説明すると、
言葉はなく、軽く舌打ち。
息子が使っていた机に載せたノートパソコンから目も逸らさない。
そう、夫は息子の不登校以来、この面にはノータッチなのだっ!
目が怒りに満ちている。
「父ちゃんの気持ちを代弁するとしたら
『お前の進学にいったいどれだけの労力とカネが掛かったか理解しているのかっ』
『自分で決めて家から出て行ったんだ。責任を全うしろっ』
・・・って感じ?」
無言の背中に問うてみたが返答はなかった。
こんな時、相談する相手が、今のわたくしにはいない。
血縁の者たちは息子の進学に胸を撫でおろし、やれやれと平常心を取り戻したところ。
友人やママ友たちは、息子の心変わりを嘆き、可愛さ余って憎さ数千倍の悪態をついてわたくしをウンザリさせる・・・。
「ウチの子は他の不登校児と違うって?してやったりと思って油断してたのに残念だったね」
なんて言葉をぶつけられ、地軸が歪んでしまったのかと思うほど激しい眩暈を感じた。
今月は既にパンパンにシフトを詰めてしまったので、不登校親の会にも参加できない。
涙もため息も出ない。
ふと、職場のMちゃんのことが思い出された。
Mちゃんは、高校中退を経験し、その後高校認定試験を経て進学。今では立派な非観血的療法の治療家である。
Mちゃんに息子の現状を分析してみてくれないかいと問うてみた。
「恐らくですけど、勉強が問題ではなく人間関係です。不登校2年で集団生活にブランクがある息子ちゃんは友達との接し方に疎くなってしまい、疲労してます。」
「蓄積疲労です。やなもんは、や。仕方ないです。」
「現状に縛り付けて固定することができるのかは微妙ですね。」
「整復する力があるのは、母ちゃん、あなたしかいません。俺もそうでしたから。休学させましょう。」
えええ・・・っ。
さすが、というか・・・。
息子の心にはコミュニケーション下手いう亜急性の負荷がずっと掛かっていたわけで。それによって度々出現するケガにはテーピングが必要で、今テーピングに成り代われるのはわたくし、という見立てだ。
俺もそうでしたから、という温かみがポッテリと残り、
Mちゃんのおふくろさんの偉大さが垣間見られる。
いつか、テーピング無しで身を立てることができるようになるのだろうか、我が息子も?
携帯の電源を入れ、
今夜のバスでそっちに行こうか?とLINEすると
「来ないで!」と速攻で返信があり。
揺れる少年の心が垣間見えた。