前回の介護認定調査で要介護2から要支援2に激しくジャンプアップした実父。
「いただきます、も言えるし歯も立派に磨ける。パンツも清潔に捨てられるしねっ」
「俺が日々、どんだけ努力してきたか、これで証明できたぜっ」・・・。
斜視ぎみの視線を泳がせて幼児のように喜ぶ実父をよそに、
家族はもとよりケアマネージャー氏も大慌てした。
「ご当人はさておき奥さんがヤバいっ!」
幸い区分変更後も介護サービスは変更なくすべて継続利用できる状態であり、再調査の申し立てはしなかったのだが。
ケアマネジャー氏が心配するところの奥さん=わたくしの実母の毎日は、こんな感じだ。
基本寝たきり生活の父のベッドサイドテーブルへ三度の食事を運び
水分摂取を促す。
着替えをさせ
歯磨きを面倒くさがる父に、せめてうがいだけでもとガーグルベースをあてがう。
清潔を保てるよう日々のケアは上も下も全面必須。
ひとたび腹を下せば地獄絵図・・・。
ずり落ちたリハビリパンツをさりげなく引き上げ、少しでも健常に見えるよう心を配る。
そのリハビリパンツの購入は近隣ドラッグストアではなく生活圏外で。そこからリュックに入れて背負ってくるのだ。
それでは大変だろうと妹がamazonで定期購入したところ、ドでかいamazon箱が気に入らず却下され、今に至る。それが母の愛なのか負けん気の強さなのか?
玄関から杖+手引きで道路に出るまで所要時間は5分ほど。
それ以上の距離に対しては車椅子を利用。
座位からの立ち上がりにも見守りと時間を要する。
床からの立ち上がりは絶望的で、深夜ベッドから落ちて尻もちをついてしまった父を立ち上がらせるのに母だけでは力が足りず、わたくしに応援要請が入ったこともある。
「おーい」の声は日々何十っぺんもかかり、やれ布団がズレた、かゆみ止めを塗ってくれ、テレビのリモコンがどうの、何か甘いものが欲しい、靴下がぬげそうだ、鼻毛カッターに電池を入れてくれ、カーテンがどうのクーラーをどうの、湿布が足りない、リハビリパンツのサイズを上げてくれ、床に水をこぼした、薬は飲んだっけ?
はたまた、ありえない話を延々とされ、ついにここまでか!と覚悟を決めたら
「そんな夢を見て眠れなくなった」と言われ腹を立てる・・・。
手のかかる実父と日常を共にする母の毎日のサポートに対する評価が
支援2に?
いやいやいや(;・∀・)
母がしてもらいたい評価は「よくもこんなに手のかかるご主人を献身的に介護なさっていますね、お疲れ様です、介護2継続です。」ではなかったか?
母頼みの父の介護。
母が倒れれば共倒れなのに。
案の定、区分変更は速攻で母にダメージを与え、わかりやすい形で現れた。
老化だ。心身の不活性化。思考の終末期傾向。活動の縮小化。諦め。悲観。
そんなわけで、ケアマネージャー氏は今月予定されている介護認定調査に
わたくしが同席することを求めてきた。
しかし。
母は「同居していない娘は部外者。」と、毎度のことながら同席を認めてはくれない。
しかも「認定がさらに軽い方向へ進むようであれば、ママの修行が足りないという行政の裁きでしょ」と。
父が倒れて10年・・・母の修行はもう、十分だと思う。
わたくしが母から父を受け取らなければならんのかなぁ・・・
具体的な策を検討する時期が近付いている。
いろんな思いを巡らせ実家から帰宅。
冷蔵庫を開けると、麦茶ボトルの底に数ミリの残量が残されていた。
飲みきったら麦茶を作っておく、そんな当たり前のことすら出来ない息子を憎く思いながら、
此処(自宅)よりも実家。
こいつ(息子)よりも実家に、お仕えする時間マシマシにせねばと思った秋の宵であった。