キンタとは12年と8ヶ月の付き合いだ。
祭りの金魚掬いで連れ帰った5センチほどの1匹の金魚が、あれよアレよという間に成長した。
成長に合わせて水槽は3個変えた。
最後の水槽チェンジは3年前。
当時中学2年だった不登校息子が八つ当たりで投げつけた国語辞典が水槽をカチ割った。
流れ出た25リットルの水と割れガラスの中でビチビチと跳ね回るキンタを息子が秒の速さで掬いあげたのだった。
「ごめんよ、キンタ」と呟きながら。
寒い日も暑い日も。
良い日も悪い日も。
何も言わずに水槽からずーっとわたくしたちの歪んだ家族の情景を見つめてきたキンタ。
最後の日も、その瞳は閉じることなく、こちらを見据えたまま…、当たり前か。
息子の手により庭の一角に丁重に埋められた。
体長約20センチ。
眠ることなく振り続けた尾びれは、もう動かない。
おやすみ、キンタ。
ありがと、キンタ。