不登校息子+親介護+単身赴任夫=思秋期なあたくし。

怒涛のようにやってきた不登校と介護と夫の単身赴任の荒波を、更年期のあたくしがサーフィンする日々の記録です。

息子の大切な武器!それは生徒手帳


映画『存在のない子供たち』予告編

 

息子15歳の誕生日の朝に
好きなことをしていいよ、と伝えるとまず、
二度寝をした。
4時に起床する彼に、この半年ほど「起きなさい」と声掛けした記憶が無い。

 


ピーマンと魚肉ソーセージの炒め物にフライパンの淵から醤油を回しかけると
香りにつられて彼はおはよう、と完全に起床してきた。
で、今日の予定は?と尋ねると
観たかった映画が終わってしまいそうだから都会へ行く、と言う。

・・・都会?珍しいことを言う。
よほど観たい映画に違いない。息子は都会が苦手だから。

で、その映画というのが『存在のない子供たち』である。

 

中東の貧困の中で暮らす家族を12歳の少年の視点で描いた作品。

両親は少年の出生届を出していなかったため、彼は学校に通うことも正規労働を得ることもできない。しかし、彼は負のスパイラルに対し真っ向から戦う・・・。

 

シネスイッチ銀座か(;・∀・)行けるのかな?

駅の場所は地上ばかりではないぞ!

先日、母は義母のお遣い物を手に入れるために三越前まで行ったが

帰りはなぜか都会の魔法にかかり東京駅まで歩いてしまったのだぞ!

・・・私の冒険記など聞く耳を持たない息子は朝食を済ますと出かける準備を始めた。

折りたたみ傘、タオル、PASMO、財布、帽子、そして徒手帳!

徒手帳の表紙を大切そうに撫でてからリュックサックのポケットに収めていた。

徒手帳があれば映画は学割料金で鑑賞することができる!

当たり前だが。

いや、不登校の息子が生徒手帳発行にこぎつけるまでには、いくつかの難所があったのだ。

 

夏休み前の三者面談のことだ。

おそらく息子は参加しないだろうと踏んでいた担任は、まさかの登校を喜んでくれた。

そこで進路担当の先生も加わって四者面談と相成った。

『なにか困っていることはないかい?』と問うてくれた先生の問いに息子は開口一発

『生徒手帳が無くて学割が利きません』と。

 

実は不登校生徒の生徒手帳の発行は、ハードルが高い

指定業者が学校にやってきて証明写真を撮影する。その写真に押印したり細工したりして生徒手帳が出来上がるわけなのだが・・・。

まず、不登校児は撮影日に登校できない!

写真屋さんで撮影した証明写真を持ち込んでも良しとする学校もあると聞くが、不登校児は髪も伸び放題で床屋も連れていけない!ましてや写真館に出かけて行って証明写真だなんてムリムリムリムリ・・・。

そんなわけで息子は大人料金で映画を観ていたが、少ない小遣いで鑑賞するには料金が高すぎる。

 

しばし四者面談のテーブルが凍り付いたような状態だったが

進路担当先生は息子の気持ちを汲んでくれたようで

『・・・そうだよな!学割が利けば、あとちょっと小遣い足して映画2本観られる』

と、生徒手帳の発行を引き受けてくれた。

 

そうして手に入れた生徒手帳は活動期に入った不登校息子の身分証明をしてくれており、4者面談の教室で撮影してもらった写真は、今年唯一の息子の顔写真なのである。

親としてはたいへん安心なアイテムとなった。

もちろん息子にとっては様々な場面で魔法の杖ほどの武器(?)になっていることは間違いない。

 

夕暮れてから帰宅した息子。

さては、もう一本映画を観たな?と問うと案の定だった。

IDをゲットして新しい人生を歩みだした主人公ゼインと

徒手帳をゲットした息子・・・。重なるようで重ならない。


映画『今さら言えない小さな秘密』予告編