不登校息子+親介護+単身赴任夫=思秋期なあたくし。

怒涛のようにやってきた不登校と介護と夫の単身赴任の荒波を、更年期のあたくしがサーフィンする日々の記録です。

コロナから覗いた自分

名月のあかりのもと、これを記している。

なんと涼やかで心地良い夜だろうか!

明けてほしくないな。

 

気持ちの良い夜だからこそ、やっと、7月中旬からこちらの、【ガッカリした話】を整理しておかなければなるまい。

忘れてしまえば良い、そう思う一方で

澱んでしまった感情のカサブタが上手く剥がれてくれないから。

 

 

7月某日朝、定期的に行うコロナ抗原検査を出勤前に行ったところ陽性反応が出た。

症状は無い。

即時に職場に連絡。

水回りのアルコール消毒。

前夜、単身赴任先から帰宅していた夫の部屋にLINEで連絡した。

食事も一緒にしていませんし、マスクで対応させて貰っていたので濃厚接触にはあたりません、と。

手持ちの抗原検査キットで再検査すると、今度は陰性反応が検出された。

どういうこと???

神奈川県のコロナ対策サポート関連の何処に電話をしても繋がらない。繋がれない。

 

まず、職場上司から

「どういうこと?昨日、出勤して仕事しちゃってるよねー?体調悪かったの?」と怒りと動転の要素強めに電話がかかってきた。

PCR検査を受けてきたいので本日休みたいと伝えると、

「モチロンですよ!お休みしてください。そして結果はできる限り早く報告してください。」とピシャリと言われた。

 

夫がわたくしの居室ドアの外から

「そういうことなら、オレ、戻るわ。休めない。仕事のスケジュール調整出来ないから」

と、早々に赴任先のアパートへ戻ってしまった。

 

近所の病院は朝9時の段階で本日の検査はいっぱいだ、と言う。また、発熱など症状が無い場合は自宅待機も検討してみては?と言われた。

 

息子がベランダから姿を現し、わたくしの居室窓の前に炭酸水を置いてくれた。ありがとう。が、しかし、食糧もちょうだいよ!

 

かくなる上はPCR検査場に出向いて行くしかない!

アルコール消毒とビニール手袋をし、車で検査場に向かった。

午前10時。会場では係員の若者が、本日の無料検査は17時分まで埋まっており、それを受けた結果は明後日に判明する、と、押し寄せる人々にオウムガエシに対応している。

ただし、有料検査は結果が早い、とも。

じゃあ、有料検査を受けたいと申し出ると

「高速検査と超高速検査があり、本日結果が出る

超高速タイプは15000円です」という。

空き店舗に突貫工事で作ったに違いない検査場の券売機になけなしの15000円を飲み込ませ証紙に換えて、わたくしはPCR検査を受けた。

 

18時過ぎに検査機関からメールが届き、やっとコロナ陰性が確定したので

菓子折りを持参して職場へ詫びを入れに行った。

「お騒がせしました」、と言うわたくしに返答は無く、スタッフは皆、忙しく黙々と施設の消毒作業に追われていた。唯一、派遣社員さんが「kanimegaさんのせいじゃないところに感染源があったんだ」と教えてくれた。

そうか、わたくし以外のところ要素があったのか、と、安堵しながら拍子抜けした。

以来なんだか仕事に対するモチベーションが下がってしまったままなのだ。罹患せずとも、これは後遺症だ。

 

20時。陰性の報告をLINEで伝えていた夫は、

再度赴任先から帰宅していて、長風呂をしながらNetflixだかAmazonプライムだかで映画を観ていた。

夕飯を作らねば、と台所に立つと、もう日常という波の中に飲み込まれてしまい、

自分が雑に扱われたことに憤りをぶつけることを忘れていた。

でもホントは傷ついて膿んでいたみたい。

 

お月様。

欠けていくチカラで持ち去って貰えないかな、この孤独と情けなさを。

 

 

 

母の庭

ルドベキア

花の名前をすぐに忘れてしまう。

ルドベキア

なんだか、東欧の絵本の中に出てくるお婆さんみたいな名前だなぁ、

そんなイメージづけをしたら、わたくしの愚かな記憶力の端っこに定着させることができたよルドベキア


ルドベキアは季節の変わり目を知らせてくれる。

夏の乾きに耐えて咲き

わたくしの行き届かない不手入れの庭のそこここに

今年も彩りを与えてくれている。


そんな話しを母にしよう、と

考えながら実家に向かったのだが

バタバタと過ごしてしまい

「またね!」と家路に着く頃になってしまった。

「またね!」とドアを閉めると門扉の横に母のルドベキアを見つけた。

かつて山芋をゴリゴリと擦りおろす母の横で

小さなわたくしが押さえつけていた鉢…

が、

水を湛えて

ルドベキアを泳がせていた。

ゼリー寄せみたいに美味しそうだった。





さわやかな、ウソ。

450分。

山の日と仕事の休みが重なった。

朝から庭には深い緑の影が掛かり

程よい風がそよいでいる。


実家へ行きたくないな、と、

ふと思う。

それを見透かされたかのように

父が体調を崩していると母から連絡を受けた。


慌てて洗濯と朝食の支度と風呂掃除を終え、

実家へ向かう。

母は来なくて良いから、と言うが、

そんなわけにもいかない、わたくしの性分。


駅までの17分の徒歩。

汗で

ユニクロのシャツは汗で背中に張り付いた。

それを見越して着替えを準備して駅のトイレで更衣する(これまたユニクロ)。


だから、わたくしの夏の荷物はいつもデカい!


さらに実家最寄りの駅からは17分の徒歩。 

今度はパンツまでが

ジットリと汗ばんだ。


「おはよう」。

母には好物の無花果のサンドウィッチを差し出して昨夜来の看護を慰労。

父の身体状況を確認。

整容を済ませると不調の訴えは消失。

ともあれ父の容態に緊急性は無さそうである。

やれやれ。


安心すると、

母から

来なくて良い、と言ったのに何故来たのか?

という言及が待っていた。

この答えに対しては、

今回飛びきりの【嘘だけど素敵なアンサー】を準備していたので

すかさず返答した。

「オサムちゃん(夫である)がね、こんな時に駆けつけてやるのが家族だから、って駅まで車で送ってくれたのよ」


母は満面の笑みで 

「そうなの!暑いから、って、アナタの事を心配して車を出してくれたのね」

「ありがたいわ、嬉しいわ!」と

繰り返し繰り返し頷くのだった。

夫とはいろいろとワケあって10年以上絶縁状態にある母なのだが、

わたくしのウソで婿に3ミリほどココロが寄った様子出あった。


お天道さまは

そんなウソを見抜いたのか

突然の通り雨でわたくしを叱った。

ように思う。


その後、実家をあとにして

再び駅に向かって17分歩いた。

額の汗を拭って見上げた空に

鳳凰のような繊細な雲が舞っていた。


もう秋なのかなぁ



群青色と眩しくて羨ましいをツナグのだ

わたくしは

あのね、

…そう、母に呼びかけることができない子供であった。

加えてわたくしは

あのね、

…そう、夫に語りかけることができない妻である。


先月、

友達の息子・陽ちゃんの絵がギャラリーで展示されたのが嬉しくて、

「あのねママ、陽ちゃんの絵が沢山の人に観て貰えたの」、思わず母にそう語りかけてしまってから後悔した。

母は溜め息をついて「あんたの息子は絵を描かないの?私も孫自慢がしてみたいわ」と、半べそになってしまったのだ。


不登校の孫息子を持って以来4年。

悔しがり、情けないと泣きながら我が母は、おばあちゃんとして出来ることを模索して心を寄せてくれてはいるのだが、ヨソの孫の成長に対して羨ましい気持ちが勝るのだ。



先週、

知人の息子がインターハイ出場を決めた。

コロナという得体の知れない病の蔓延に脅かされ引きずり下ろされ、時に閉じ込められた競技生活を経て、やっと安全に手に入れた闘いの舞台!

赴任先から帰宅した夫にわたくしは

「あのね…!」と、思わずこの話題を語りかけてしまってからハタと気づいて口をつぐんだ。

息子の不登校以来、いや、息子が高校を退学して帰還して以来、この手の話題が苦手だ。

辞めたはずのタバコを手にして逃れるように散歩へ出て行ってしまった夫。

街灯が照らす背中が小さくみえた。


わたくしにとて息子の不登校は悲しかった。

わたくしにとっても息子の高校退学は人生最大級の絶望感を引き寄せた。

友達の居ない17歳男子の将来は、群青色に思える。

しかし、それを選ぶしかない子も居り、そうしながら18歳で成人となっていくのがウチの息子のリアルだ。

ヨソの息子の成長は眩しくて羨ましいが、わたくしの人生には重ならない。凄い人の人生に触れて凄いなーと感じる正しい反応を、いつのまにか取り戻すことができたんだなー、と思う。


さて、では…

わたくしが親として次に備えるものはなんなのか?

息子の年金、健康保健を捻出できるよう労働し続けていくことか…

いや、その前に 

母と夫に「あのね、」と息子の話題を語りかけていこう…

と…思う。






タイムマシーンに乗って

京浜急行を描く彼に

文具店で赤系統の色鉛筆を18本選び

リボンをかけてもらった。

赤にもいろいろある。

京浜急行の色、そのものズバリというのは叶わなかったが、今、彼が好んでいるのは【餡子色に寄る赤】という情報を頼りに吟味した。

 

文具店を出ると外は突風が吹き荒れており、雨の匂いが充満していた。

車のイグニションにキーを差し込んだ途端に大粒の雨がフロントガラスに纏わりついてきた。

オマケに雷鳴も轟いている。

近頃、調子が悪いカーナビは何故か現在地を海上と示しているが構わない。

道案内など不用だ。

どしゃ降りの環状2号線は、まるでタイムマシーンのトンネルのなかのようだったが、高揚した感覚がそれさえもたまらなく…

ちむどんどん、ソレがピッタリな感覚だった。

 

山谷の交差点を曲がると緩やかなカーブが続く。

苦しくて嬉しくて、、、

この道を

相反するいろんな思いで行き来してきた15年〜20年のことが巡り、息苦しくなってきた。

仕事、

独身から結婚、

出産、

子供の成長。

何かにつけて報告しあってきた友が住む地へ!

今日の目的は友の息子が描いた絵を観ることだ。

 

もうすぐ弘明寺駅、という辺りでコインパーキングに車をおさめ、展示会が行われているアトリエを目指して歩く…。

…はて、

アトリエの名前は何だっけ?

写メした新聞記事を覗いてみる。

Goozen、とある。

友に、来訪を伝えることなくココまで来てしまったのだが、とLINEを送ると、

運良く友も、これから向かうところだ、と返信が来た。ぐうぜん!

安堵して携帯から顔を上げるとGoozenは目の前だった。まさに、ぐうぜん!

 

白い壁一面を埋め尽くす数の京浜急行の絵の数々。

筆圧で赤が照り返している箇所さえある。

むせかえるほどの強さを感じ呼吸が浅くなるほど。

そこへ友がやって来た。

言葉が出ない。なんだか、言葉が出てこなかった。

ふと、この友が、

かつて賞を取った散文詩が甦った。

【タイムマシーンに乗って 小さな赤ん坊を抱いて泣いていた あの頃の自分に「ナイスファイト!」と言ってあげたい】

 

アトリエを訪れる人はあとをたたない。

友に色鉛筆の束を押しつけて「またね!」と外に出た。

雨はすっかり上がり、青空さえ垣間見える。

友の息子はの名は陽光、という。

今月18歳の誕生日を迎える。

 

 

 

 

 

麒麟

運わるく、帰宅時間に雨に降られた。

自転車で15分ほどの道のりを走り我が家に辿り着く頃には

どしゃ降りの雨はカッパの縫い目から染み込んで肩口を濡らしていた。

郵便受けを覗くと、こちらも雨にやられた封筒が底に張り付いていた。

郵便のお仕事は、大変だ。


おーい、タオルを取っておくれよー


と、玄関で息子に呼びかけたものの、返事がない。耳をすますと、浴室から鼻歌に紛れて息子の妄想サッカー実況が漏れ聞こえてきた。

…再三ブラジルに攻め込まれるもGK権田がナイスセーブをしている…

場面らしい。

こちらは脱力。いろんな意味で、いろいろ。


…手にした封筒の一つに

所属している不登校親の会からの会報があった。

手書きコピーの会報誌は温かみがあり、楽しみであり、何より、わたくしの御守りである。

ポタリポタリと雫が垂れる封書を注意深く開き拝読する。

そして、ああ、そうだよね、と腑に落ちる。


泰平だ。

四年前、息子不登校初期には考えられなかった今日が広がっていく。

認める。

手も口も出さない。

目を閉じてα波を描くように麒麟を想う。

ん?麒麟

わたくしは冷蔵庫から麒麟の絵が付いている缶チューハイを取り出し自室に入った…事までは覚えているのだが、あとの記憶がバッサリ途切れている。


息子はキックオフに間に合うように風呂から上がり、

ジャガイモをレンチンして夕食とし、

テレビの前でサッカー観戦した様子だ。


キリンチャレンジカップ

ブラジルを相手にGK権田は大活躍であったことだろう。

あとで息子に聞いてみようと思う。



不協和音も我が家なりかな

わたくしの仕事が日曜日休みであることは、

実は、ちょっと都合が悪い。

 

単身赴任の夫が金曜の夜に帰宅し、週末を自宅で過ごしているので

最大限に【おうち時間】を満喫して貰いたい一方で

普段、生活を共にしていないお互いの時間の使い方が全く噛み合わず

何かとがっかりする場面に直面するのだ。

 

今朝もそうだ。

4時に目覚めたわたくしは、ちょっとだけ本を読んで二度寝した。

そして次に目覚めたら7時。

夫は自力で朝食を作り、既に摂取。

ソファにごろ寝して【所さんの目がテン】を眺めてた。

思わず「おはよう」ではなく「ごめんなさい」と言ってしまったわたくしに

夫からの返答は何もなかった・・・。

 

昼もそうだった。

ウォーキングに出かけた夫の居ない隙にスポーツセンターへ筋トレに出かけたものの(最近、筋トレを行なっているが、見事に効果が現れないのは何故だろうか?)

昼ごはんの支度を逆算したら有酸素運動の時間を削らなけばならず慌てて帰宅。

既に帰宅してソファでテレビを眺めている夫に思わず「ごめん」とやると

夫は「運動なんかはマシーンなんて使わなくでも自重でできると思うよ」。

ンなことは、わかっておるっ!

効率よく運動したなぁ、とわたくしの脳に思わせるためには出かけていくことこそが大切なのだっ!

その後、昼食を家族3人揃って黙食のテーブルを囲む。

おろおろする元・不登校息子。

 

午後は読書をしようと庭に出て寝ころんだところ、

夫が芝刈り機を作動!

部屋に退散し、お勉強をしようと机に向かうと

夫はリビングで午睡で爆音のイビキっ!

 

・・・と、まぁおよそ息が合わない。

そして我が家は庭は広いが部屋が狭いのだ・・・。

 

そうこうしているうちに夕餉の支度をせねばならない時間となった。

日曜の夫のタイムスケジュールは、ほぼほぼ決まっていて

15時から2時間程度入浴タイム。17時から晩酌。20時就寝。

ややピッチを上げて調理を進めようと冷蔵庫を開けると・・・

あれ?無い。作り置きのおかずたちと下ごしらえした野菜が消えている・・・。

「朝ごはんに父ちゃんがスープを作ってくれたんだけど」

元・不登校息子が気の毒そうに真相を明かしてくれたところによれば

作り置きを残り物と勘違いした夫は

おかずの一切を圧力鍋に入れて具沢山スープを完成させた。

「おいしかったんだけどね・・・」と、息子。

「で、こないだ母の日をやらなかったからコレ、おそくなっちゃったけど母ちゃんにあげる」、と卵焼き用のフライパンを差し出した。

国内最高級燕三条製、と帯にうたってある。

おそらく息子が自腹で母の日のプレゼントを購入したのは初めてのことだ。

乱視まじりのわたくしの視界が歪んで涙目になった。

もしかして作り置きおかずがスープになるのを止められなかった詫び?

気を遣わせているんだなぁ。

 

日曜。なんとかせねば。