深夜に目覚め、シンクに溜まったままになっている食器を片付けている。
5時間前にサッと洗っておけば、こんなに罪悪感に苛まれることは無かったのに。
はて?昨夜は何を作ったのだっけ???
食器に紛れて500ミリリットルサイズの缶チューハイが2本。
飲酒しながら、それでも何とか夕餉の支度をしようとしていたのか?
はたまた途中で諦めてしまったのか、は、記憶から落ちてしまっており分からない。
・・・帰宅し、息子の顔を見た途端に何か怒りのような感情が沸き、
そのまま冷蔵庫に直進!缶チューハイを手にしたところまでは明確なのだが。
初夏から10月までのわたくしは、
結構頑張ったような気がするのだが、思うような結果が得られなかった。
息子の高校退学・・・
夫と息子の不協和音・・・
孫可愛さ余って憎さ1000倍返しの実家母・・・
そんな最中、唯一家族の心が愛しさで一致していたセキセイインコのタロウが逃げてしまい・・・
目減りする銀行残高はわたくしの稼ぎと遣り繰りでは食い止められず・・・
ならば転職だ!と本当に転職してみたものの、焼け石に水程度の年収アップかもしれず・・・
転職し在宅時間が減り、副業を行う時間も取れず・・・
庭は荒れ・・・
わたくしの真情が投影されており、何よりわかりやすいのが畑。やる気にならなかった畑には秋の実りが何一つ無い・・・
進めば得られる。
進めば変えられる。
そう信じて半世紀を生きてきたわたくしにダメが出た4か月間であった。
中でもいちばんの打撃は息子高校退学で。
ヤツが進学先の高校から【あと何秒此処に居ればいい?】とわたくしに自分の進退伺いを求めてきたあたりで、わたくしは無自覚に息子の人生のハンドルを握りしめてアクセルをふかしまくっていたことに気づかされた。
中学2年間を不登校で引きこもっていた慎重で人見知りな男子が
わたくし好みの進学を選択し実行するウルトラCを見せた、そのワケは?
・・・わたくしを安心させたかったから?喜ばせたかったからではないだろうか?
そりゃダメだとハッキリ理解した。
もう、この子の進路について口出ししない、そう決めた。
以来、息子へ何か言いたくなるとアルコールを摂取し口をふさぐ。
昨夜、雨の中を帰宅すると息子がキッチンに立っていた。
退学した高校のネーム入りジャージを着て・・・。
ああ、この子がこのジャージを着てグラウンドを駆け回る青春は無いのだ!と頭が理解し喉が締め付けられ目頭が熱くなり、ただいま、も言えず缶チューハイに手を伸ばした。
後のことは覚えていない!毎度のことだが。
・・・「かあちゃん、大学芋作ったんだよ、食べてくれないの?」
ふと、記憶の端にそんな言葉がけをして揺り起こされたような場面が蘇る。
冷蔵庫を開けると照り艶の良い大学芋が収納されていた。
程よい甘さ。
サミュエル・ウルマンの詩【青春】が心によぎる。
青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
歳を重ねただけで人は老いない。
歳は70であろうと16であろうと、その胸中に抱き得るものは何か
驚異への愛慕心、
空に閃く星辰の輝きにも似ている。
鉄仰、剛毅な挑戦、探求心、人生への歓喜と興味。
・・・場と時と年齢を選ばず、心の様相を青春というならば、16歳で毎日在宅の息子の今も青春であることに間違いはないのだろう・・・。そしてわたくしの今も。