職場の若者が食あたりで苦しんだと聞いた。
上を下への大騒ぎで、
あまりの苦しみを体験した彼はいまだに食料を見たくないのだ、という。
聞けばまだ腹部がシクシク。
お尻もヒリヒリするというから、気の毒だ。
もしや、食あたりではなく、
アレでは?
ソレなら大変!
…だけどアレやソレの病名が出てこない。
「確か、数年前にビヨンセの真似をする可愛い子豚ちゃんみたいなお笑いの人がシメサバで落ちきれていなかった寄生虫に胃袋を齧られて入院したじゃない?もしかして君もソレじゃない?」
…子豚ちゃんのビヨンセ?
…シメサバで寄生虫?
同僚が助け船を出してくれた。
「あー。NYに拠点を移すコでしょ?凄いよねー?なんつったっけ💦」
いや、誰じゃなくて私は病名が知りたい。
「マツイナオミじゃなくて、ワタナベナオミだ!」
まず一つクリア!
私たちは勝利のガハハ笑いをかっ飛ばす!
「シメサバの寄生虫…たしか、キアヌリーブス的な音だったような…?」
「そんなイケメンな病名じゃないっしょ?」
で、また膝を打ち合ってガハハ笑い。
「き。き…アニキみたいな?」
「あ!そんな感じ!やだ!キアヌリーブスじゃ、き、しか合ってないじゃない💦」
再び涙目になりながら顎が外れるほどガハハ笑い。
しかし、まだ病名が出てこない!
「あ!アニキサスじゃなかった?」
おー。そうだそうだ、だの
兄貴刺す、で覚えておこう、だの
お互いを讃えあったのちに
改めて若者に「ソレじゃないか?」と
満足げな心配顔を向けたのだった。
いやはや。
シメサバの寄生虫を導き出した見事な連携プレーを家庭で披露した同僚。
高校生の息子ちゃんに
ソレって、アニサキスじゃね?
と指摘されることになるのだが。
…私たちはこの一件を
キアヌリーブスからの兄貴刺すでアニサキス事件と名付け、
平成最後の春の珍事として記憶していくことにしたのだった…。