不登校息子+親介護+単身赴任夫=思秋期なあたくし。

怒涛のようにやってきた不登校と介護と夫の単身赴任の荒波を、更年期のあたくしがサーフィンする日々の記録です。

送り出しまでのカウントダウン。火曜日からその日まで

火曜日。

なかなか起きてこない息子の部屋を覗くと

部屋の主は乱立する引越し荷物と大量のゴミの中にスペースをつくり、

キチンと布団にくるまって眠っていた。

 

この様子だと

出発までに荷造りが、間に合わない!

いささか過保護ではあるが

朝食後、荷の仕分けに加勢することにした。

 

アッという間に夕方になった。

 

水曜日。

仕事から帰宅すると乱立する荷物が玄関にまで溢れていた。

息子は今日届いたのだ、という電子レンジの取説を熟読しており、

ココらへんの機能を吟味して選んだのだ、と自慢げに語った。

「炊飯器も見てみない?」そう言って

ニトリで見本品だから安く手に入れることが出来たという炊飯器を携えて向かってくる息子を遮り急ぎ夕食を作りに取り掛かった。

すると今度は

「ま、お茶でも飲んでからご飯作ろうよ」と、コンビニの串団子を取り出してお茶を淹れ始め

「一緒にテレビを観る機会も、もうなくなるんだし。ま、ここに座って」と、ソファを指差す息子。

促されるままに、みたらし団子を食べているとインターフォンが鳴った。

近所のママ友が娘を伴って息子に餞別を渡しにきてくれたのだ。

お年玉袋に【どうしても、の時の新幹線代】と記されて片道新幹線のチケット代が入っていた。

 

木曜日。

朝からニンニクの香りで目が覚めた。

息子がローストビーフを焼いていた。

「ちゃんと食べてね」、だって。

夕方、ご近所の方が息子にタケノコご飯と海苔弁当を届けてくれた。

一人暮らしスタートの息子に「新天地での毎日の弁当の見本にしてね」、と。

 

金曜日。

仕事から帰宅すると既に夫が単身赴任先から帰宅していた。

慌てて夕食を支度しようとしたが、

思い付きで夫の大好物を買ってこようと車を走らせた。

モスバーガーのスパイシーチリドッグとオニオンリング

日々の切り詰めた生活の中では考えられないメニューであるが今夜は特別。

家族三人雁首並べて最後の晩餐。

息子はモスバーガーが包まれていた袋の中に零れ落ちたソースを丁寧にスプーンで掬いあげて堪能していた。

・・・もっと日常食として食べさせてやっておけばよかったかなぁ・・・。

 

土曜日。

雨の朝4時。ついに一睡もできずに朝がやってきた。

息子旅立ちの朝だ。

塩鮭の厚切りの切り身をカリッと焼いたやつと

ジャガイモとワカメの味噌汁は、かつて夫の実家で食べた義母の得意メニューの再現である。

三人無言で食卓を囲む。

車の夫とバイクで出発する息子は運行コースの最終打合せ。

岡崎SAで落ち合って、昼飯を食う予定らしい。

その間、線香を1本立てて旅の無事を祈った。

 

ほどなくして出発の時間となった。

息子のバイクサドルに雨で急ぎ散った桜の花びらがひとひら張り付いていた。

 

息子。行ってこい。

 

気を取り直して出勤の支度をしていると

ご近所の方が火打石を持って駆けつけてくれた。

「間に合わなかったかぁ・・・」彼女はそう言いながら

息子が出かけて行った方角にむかって火花を散らしてくれた。

 

息子が結んでくれた沢山の縁に包まれているなぁ・・・。

わたくしは心の不安定さを感じないようにしつつ仕事に出かけた。