10月某日。
義父の四十九日法要は、雨だった。
遡ること3か月、義母の四十九日法要の日は梅雨明けの酷暑だった。
わたくしは寺での法要の後、会食を辞し職場に向かってしまった。
結果、義父と共に食事をする機会を永遠に失ってしまったのだ。
夏と秋。隣り合わせの季節で今年2度目の四十九日法要。
そして義母の時と同じ店での会食である。
義父の陰膳の前で義姉の箸は進まない。涙も止まらない。
マスク会席では会話もままならない。
義兄嫁が早々に席を立ち、義父の遺影に向かい好物だった鰤の刺身を供していた。
生醤油をタップリと浸けて。
わたくしも義兄嫁に倣い、漬物を醤油に浸して遺影に供してみた。
・・・ふと向けられている視線に気づくと
「みなしご」になった夫が冷ややかな目でわたくしを見ていた(-_-;)
その翌日も雨。
あれれ?傘が無い。ない、ない、ない?と傘を探すわたくしに
息子が閃いた!という顔つきで
「昨日の店だよ!キソロに忘れてきたんじゃね?」と言う。
・・・?
息子よ!それを言うならキソジである。
なるほど喪服のポケットには傘立てのカギ札が入っていた。
「雨晴れて笠を忘る・・・かぁ。」
「いや、まだ降ってるし!」
・・・嫁と孫のバカっぷりに、こりゃあ、じいじもあの世でビックリだろうなぁ・・・。
少しずつ哀しみから遠ざかっていかなくてはならないだろうが、
義父母から享けた恩は脳に身体に心に留めておかねば!
雨やんで人、傘を忘る。とかく人間は時の流れに過ぎし日の事を忘れがちなものです。推理と思い出のご対面!
幼少の頃TVで聴いた桂小金治の名調子を思い出しながら向かった和食レストラン【木曽路】で
わたくしは忘れた傘とご対面したのだった・・・。