不登校息子+親介護+単身赴任夫=思秋期なあたくし。

怒涛のようにやってきた不登校と介護と夫の単身赴任の荒波を、更年期のあたくしがサーフィンする日々の記録です。

きっと行こうぞ!

夜来風雨の声を聞く。

絶え間なく降りつける雨音は、
ざーっ、を通り過ぎて
どーーーーー、だ。
あまりの降りように読んでいた本も進まずに、しばし夜の庭を眺めていると、
バタバタと駆け足で息子がやってきた。
なんでも「寒い夢を見た」そうだが、
反して額と背中に冷や汗をビッチリとかいている。
「風雪に視界をやられてヤバかったなぁ、ホワイトアウトだった」。
そう言いながら床にバッタリと、うつ伏せ寝した背中がまだ激しく上下している。
どうやら、バイクで峠道を攻めて行く、そんな夢を見たらしい。 
「こんな雨降りの夜に、母ちゃんが夜勤じゃなくて居てくれて良かった、と、素直に言ってみなさい」と呼びかけると、
突っ伏した横顔から隠しきれない笑顔が漏れていた。
 
やがて雨足は弱まり、明けてくる淡い朝の情景に啼鳥を聞く・・・。
ふと、「八ヶ岳に行きたいな」と息子が言う。
そういえば、小さな息子を連れてあれほど通った八ヶ岳へ、かれこれ4年も行っていない。
わたくしたち母子を、いつも笑顔で迎え入れてくれた宿の料理長は、お元気だろうか。
息子の耳元に
「好きなだけ、たくさん食べて帰りなさい」
「いつかお母さんと一緒に北岳に登れる強い男になるんだよ」と
囁いてくれた料理長の笑顔が息子の八ヶ岳での思い出を忘れられないものにしてくれている。
息子にとっての八ヶ岳は、【やつがたけ】程度であり、頬っぺたを優しくなでられるような思い出のまま更新されていない。まだ彼は登山の汗も苦しみも達成感も体験していない。同時に人生の汗も苦しみも達成感も・・・。
ああ。あのまま息子が普通の歩みで成長していったなら、今頃どうしているだろう。
ああ。どうしても、わたくしは
死んだ子の歳を数えるように息子の不登校以前の姿の続きを追いかけてしまう。
ああ。
ああ。
ああ。花落知多少、と、感じてしまう。
不登校を主張し、通信制高校を選んだ息子の今が、わたくしには孤独に見えてしまう。
北岳へは、わたくしが息子を連れて行かなくてもいいのかなぁ…
いや、もう、わたくしの体力が北岳には、そぐわないだろう。
我が体力落つることを知る多少ぞ…、だな。
でも、そうだね、行きたいよね、やつがたけ。

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